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南アルプスの魅力

 

湯本 光子

学術調査委員

出会いは30年以上も前のことです。新米教師になったばかりの昭和50年の夏。学生時代から生物の調査に参加していたのですが、地域が南アルプスまではなく、大学から見える山なみは遠い存在でした。この年の8月高山植物の調査に参加させてもらったのが最初です。北沢峠はまだ車道が開通していないときで、野呂川の調査をしながら山小屋に一泊。翌日仙丈岳を目指しました。樹林をぬけ、森林限界をこえて初めてみたカールの中のお花畑。「すごい。花で黄色や白に染まっている。」これだけではなく、藪沢ではクロユリの大群落。こんなところがあるんだと思った南アルプスとの出会いです。

図鑑で見ていたものがそのまま、それ以上の美しい姿で目の前にありました。それからは夏に行われる北岳はじめ白根三山、甲斐駒、鳳凰三山、仙丈岳、塩見岳、赤石岳などの調査に参加する機会を持つことができました。

私自身は山から流れ出す水の中の生物調査を行い、恩師中村司先生からは鳥類、植松春雄先生はじめ植物研究会の先生方からは植物についてご指導をいただきました。何度も行けば行くほど新しい記録がノートの中に積み上がり、南アルプスの大きさを感じます。行けた所はほんのわずかなところに過ぎず、今も行かなければと思うところばかりです。

頂上まで行けなかった笊ヶ岳で採集した体長18cmのヒダサンショウウオは初めての出会いとその大きさに驚きました。この標本は私の大学卒業時に国立科学博物館に収蔵されました。その後、秋の早川支流で見たカエルたちは当時記載されていなかったナガレタゴガエルでした。そんな未知の生物がたくさんいそうだと思っていたら、アカイシサンショウウオ発見が報道され、南アルプスは未知の世界の魅力を持っているという思いを強くしました。

南アルプスと言えば高山植物とだれもが思うのでしょうが、樹林の凜とした静けさ、清らかな水、そこにはたくさんの生物がいます。現在は温暖化、獣害といった大きな課題を持っています。私たちは自然がくれたこの宝を後世に伝えるために可能な限りの幅広い調査とその自然の持つ価値の評価、保存の重要性を理解することが大切だと思います。

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